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チェンジ・ライフ・ラプソディー2 (2)

作.エイジ
キャラクター:倉塚りこ

2-2

「あ~………唐突だが転校生を紹介するぞ」
 翌日。朝のHRで本当に唐突に担任がそう言った。
 途端ざわざわと辺りが騒がしくなる。
「ちなみに性別は女子な。男共は喜べよ」
 おおっと男共が騒ぐ。………あほらしい。
「なんだよ。興味ないのか?」
 そんな俺に勇助が声をかけてくる。
 俺は、
「特には。転校生とやらがどんな奴だろうが俺達と深く関わることはないだろ。………正直どうでもいいな」
 俺のそっけない言葉に勇助はがっくり肩を落として、
「そうだよな………お前や直樹はそういう奴だよな………」
 ため息一つ。
 ………変なこと言ったか? つーかため息まで吐かれるほどか?
 そしてそんな雑談を尻目に扉は開かれ、一人の女生徒が姿を現した。
 その途端周囲のざわめきが大きくなる。
 ………なるほど。確かに騒ぐのも無理ないかもしれないな。
 俺でさえそう思える人間がそこにいた。
 印象を一言で表すなら『お嬢様』だ。容姿といい、立ち振る舞いといい、纏う空気といい清楚で可憐。そんな感じか。
 だけどそれだけじゃないような………なにか違和感を感じる。一体なんだろうか。
 そんな俺の視線を感じ取ったのか、転校生はこっちに視線を向けると、すっと目を細めた。―――まるで睨みつけるように。
 ―――え?
 疑問に思った時にはすでに転校生は違う方向をむいていて確かめようがなかったけど………今のは………。
 そして転校生は自己紹介もなにもせずにズンズンと歩いていき、一人の男子生徒の前で止まる。その男子生徒は―――直樹だった。
 転校生は緊張した面持ちで息を吸い、

飛島仁次郎挿絵05

「私の名前は鷹野 蘭(たかの らん)。高島 直樹さん。あなたの事が好きです。付き合ってください!」
 ………………
『えええええぇぇぇぇ!?』
 たちまち教室は阿鼻叫喚の渦に包まれた。

「ほら遅い! もっと速く! もっと鋭く!!」
「は、はい!」
 俺の言葉に従って春菜ちゃんは面打ちのスピードを上げる。
 でも、
「ほら腕だけで振らない! 足運びもちゃんと意識する!」
「はい!!」
 春菜ちゃんはそう返答するが、言葉とは裏腹に手足の動きはバラバラだ。
 ………仕方ない。
「よし。やめ!」
「あ、ありがとうございました………」
 そう言うのが精一杯だったようで、彼女はペタンと床に尻もちをつく。
 それに慌てて雪緒が駆け寄り、水を渡し、こっちに視線を向け、
「先輩。ちょっとやりすぎです」
 その目に浮かんでいるのは非難だ。
「春菜ちゃんはまだ剣道歴一ヶ月ですよ? そんな子にこの訓練は無茶です」
「………」
「最近の先輩変ですよ? なにかあったんですか?」
「………」
 俺は答えない。なぜなら自分でもよくわかっていないからだ。
「きっとあれだよ」
 そんな俺の代わりに口を開いたのが花穂だ。
 指をピッと立て、
「先輩のクラスに来た転校生。その人が高島先輩にまとわりついてるからだと―――」
 ギロリ。
 俺は花穂を睨みつけて黙らせると、そっとため息を吐いた。
 そう。花穂の言葉はまさしく図星なのだ。
 ズバリ俺のここ最近の苛立ちはあの転校生―――鷹野 蘭にある。
 あの衝撃のHR告白。直樹はその時にすでに返答を返していた。すなわち「ごめんなさい」と。「付き合えない」と。
 だけどあの女はそれだけでは諦めなかった。ふられたその翌日から直樹につきまとうようになったのだ。直樹もなんだかんだで甘いから鷹野にずっと押されっぱなし。
 そんな状態がここ数日ずっと続いている。
 ………まあ、最近は直樹も鷹野から逃げ回っているようだけど。
 とにかく。うっとうしいのだ。あの女は。
 はっきり言って、目障りだ。
 そこまで思って俺は不可解に思い首を傾げる。なんでここまで不愉快なのか。別に直樹がどんな目に遭おうが構わないじゃないか。現に苛立っているのは俺だけで、勇助は完全に傍観者だ。
 俺もそれでいいはず。横からおもしろおかしく眺めていればいいのだ。
「仁! いるか!?」
「っ!? な、なんだ? どうした?」
 いきなり直樹の声が響き俺は振り向く。
 そこには息を切らした直樹の姿が。
 直樹はそんな俺には構わず駆け寄って、
「かくまってくれ!」
 ………………
「は?」
「鷹野さんだ! 頼む!!」
 それだけでなにがどうなっているのかを把握するのは十分だった。
 俺は頷いて、
「わかった。部室に隠れてろ」
「す、すまん」
 直樹はそう言い残し、部室へと消えていく。
 そしてそれとほぼ同時に、
「高島さん!」
 ここ最近で聞きなれた声が響く。そしてその声が響くのと同時に、俺の表情が曇るのが自分でもわかった。
 俺はそのままの表情で、
「………なにか用?」
「………別にあなたに用はありません」
「じゃあ帰って。練習の邪魔」
「そうはいきません」
「………なんで?」
「ここに高島さんが来られたでしょう? 私は高島さんに用があるのです」
「………一体なんの用? よかったら伝えておくけど?」
「お気遣いありがとうございます。ですがあなたには関係ないことですわ」
 ………睨み合う。
 周りも不穏な空気を感じ取り、固唾を呑んでこちらを見守っていた。
 そして先にしびれを切らしたのは俺の方だった。
「………あのさぁ………」
 深くため息を吐き、言ってやる。
「直樹にまとわりつくの、いい加減やめてくれる?」
「なぜあなたにそんな事を言われなくてはならないのです?」
 そんなの決まってる。
「友達だから。友達の心配するのは当たり前でしょ?」
 その言葉に鷹野はむっと押し黙る。
「あんたが直樹の事が好きなのはよ~く知ってる」
 なにせいきなり直樹に告白したからな。
「あんたが直樹にアプローチするのは勝手。でもね、相手の事もちゃんと考えなさいよ」
「私が高島さんの事を考えてないとでも!?」
 鷹野は俺の言葉に激昂するが、
「考えてないでしょうが」
 俺は冷ややかに言葉を返す。
「あんたがやっていることは直樹にとって迷惑でしかないの」
「迷惑!?」
「じゃなかったら優しいアイツがあんたから逃げ出すわけがないでしょ。証拠なんてそれだけで十分」
 その言葉がトドメになったのか、鷹野はなにも言うことができなくなり、俯いた。
 だが、
「………そこをどいてください………」
「………嫌」
「………もう一度言います。そこをどきなさい。どかないなら―――」
「なら?」
「力ずくで押し通ります」
 ぞくりと背筋が泡立つ。この女は本気だ。
 なら―――
「雪緒」
「は、はい!?」
 端の方で影から事態を見守っていた雪緒が慌てて返事をする。
「竹刀二つと、防具一式。持ってきて」
「はい。って、ええ!?」
 驚愕の声を上げる雪緒。
 雪緒だけじゃない。周りのギャラリーも同様だ。その言葉の意味なんて一つしかないから。
 しかし対照的に鷹野は笑い、
「どうしても私を止めようと?」
「当然。悪いけど直樹のところには行かせない。力ずくでも止めるから。………卑怯だろうけどね」
 武道の心得がある人間が、ない人間に対し一方的に打ちのめそうっていうんだ。はっきり言って卑怯を超えて卑劣だと思う。せめてもの情けに俺は防具を一切つけないが、そんなのは気休めにもならない。
 だけど。こいつを直樹のもとへは行かせない。
 しかし鷹野は笑みを崩さず、
「防具なら私もいりません。竹刀だけで結構です」
 その言葉に周りはもちろん。俺も驚きを隠せない。
「ご安心を。私は幼少の頃から様々な習い事をしてきましたので。剣道も経験済みです」
「………いいの?」
「立ち会ってみれば一目瞭然ですわ」
 ならばそれ以上はなにも言うまい。
 そして雪緒から竹刀を受け取り、構える姿は―――なるほど。様になっている。
 初心者じゃない。いや、それどころか―――
「先輩。注意してください」
 雪緒が竹刀を渡すとき、そっと耳打ちしてくる。鷹野の実力に気がついたんだろう。俺はそれに頷いた。
 鷹野 蘭。間違いなく、強敵だ。
「ルールは単純。先に一本取った方の勝ち。それでいいな?」
 喋り方が元に戻るが、そんな事を気にしていられる相手じゃない。
 全力でいかなければ返り討ちにあうことは必死だ。
 鷹野は頷く。
「ええ。それで結構です」
「………合図、頼む」
 俺の言葉に雪緒はすっと腕を上げ、
「はじめ!」
 振り下ろした。

<つづく>

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