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勇者と魔王の嫁入り修行(その10) by.DEKOI

人間の勢力圏において最大級の建物の1つに「ベッケンハイム城」がある。
この城は人間の間ではトップ3の権力を持つ皇族ベッケンハイム一族が住む王城だ。
ベッケンハイム城の高さ、敷地面積は平面世界リーザスに存在する建物の中でも確かに有数クラスなのだが、しかしこの城はある1点において最大であったりする。
この城、崖の上に建っているわ夜な夜な崖の穴から這い出てきた巨大こうもりが奇声をあげながら飛び回るわ、雷がよく落ちる地域なのでいびつな形の避雷針はそこら中に建っているわ夜襲を考えて全体が黒ずくめだわ、何故か城門にはでっかいドリルがついてるわ周囲の森から時折「イア、イア、ハ〇ター!」とかいう妖しげな叫び声が聞こえてきたりする。
そう。ベッケンハイム城は「怪しさ」という点において世界最大の建物なのである。
誰が言ったか「悪魔城」。その怪しさたるや、(元男)魔王である筈のルゲイズにしてドン引きするクラスであった。


魔王であるはずのルゲイズが悪魔城、ならぬベッケンハイム城を訪れたのには訳がある。
それは本日、遂にあの憎き勇者と雌雄を決する勝負をする事になるからだ。
問題は、戦いの内容が料理勝負、裁縫勝負、そして人魔混合宮廷ダンスという訳分からん勝負の3つだという事。ぶっちゃげて言えばお嫁さん、お姫様勝負である。
ついでに言うとルゲイズがこの勝負を受けた最大の理由は、勝たないと男に戻れないと脅されているからだ。幾ら親友のヴァンデルオンに毎日「美人だ」「クールだ」「可憐だ」「一発やらせろ」とか褒められまくっていても、ルゲイズ本人は自分は男だという気持ちが強い。正直胸の重さと股間の涼しさおよび女性特有の下の世話には慣れようがないのが現実だ。

しかしこの勝負、負けたら男に戻れない処か嫁入りさせられるらしい。その結末だけはルゲイズ本人としては断固として拒否したいし、恐らく勇者ウィルも同様であろう。そういった意味ではこの戦いの場に参加する事そのものが高いリスクを負う事になりかねない。
だがしかし。勝者が敗者を服従させる最も効果的な方法は敗者を自分の下につけさせるのも確かな事であり、その派生として奪った国の王の后もしくは娘を自分の妻に娶る事はよく耳にする話である。そういった観念から考えれば、負けた方は勝った方に嫁ぐという行為はあながち間違ってはいない、とも言えなくもない。

「まあアイツを娶るかはどうかはともかく、男に戻る為にはまずこれからの勝負に勝たないとな。」

ルゲイズは思わず独白した。そう、まずはそこからである。男に戻ること。少なくともルゲイズにとってはこれが最優先事項であり、勇者が自分の下に嫁ぐだどうだとかは取り合えず置いておく事にしていた。これが特訓の期間に得たこれから始まる戦いに対するルゲイズの考え方だ。目的を多様化せず、1点に向ける事で戦いに対しての集中力を高めているのだ。

この戦い、絶対に負けられない。勝って男に戻るんだ。
ルゲイズは内心でそう強く、だが表には出さずに決心を固めた。



一方その頃。
ベッケンハイム城の別室もとい自室にて(元男)勇者ウィルは呑気に紅茶を飲んでいた。

「ふう、やっぱり味覚が甘くなっている。」

形の良い眉毛を少し寄せると、近くにあった砂糖粒を2つ手にし紅茶が入っているカップのなかに放り込んだ。カップの中身をスプーンで何度かかき混ぜた後に再度紅茶を口にすると、納得したかのように首肯した。

「しかし、困ったな。思った以上にボク、『染まってしまった』みたい。」

そう口にしながらも、満更でないとも取れる微笑を浮かべるウィル。その口調と仕草は男性よりも女性を、具体的に例を挙げるならば「ボクっ子」を連想させる。
そう。ウィルは3週間のお嫁さん修行をした結果、「女性」として下地が出来上がっていた。今や心の中の言葉までも女性らしさが出てきている始末。
実際のところ「男性に戻れたらそれでもいいけど、女性のままでいても別に問題ないよねー」がウィルの本心だったりする。それすなわち、現状に全く不便を感じてないのだ。

「でもだからと言って、ルゲイズに負けるのは癪なんだよね。何より彼の妻になるのは幾ら今のボクでも避けたい事態だし。」

天然ボケキャラの象徴とも言うべき行動を頻繁に取るウィルとはいえ、自分が人間族最強の戦士である事くらいは自覚している。そんな自分がルゲイズに嫁ぐという事態は、人間と魔族のパワーバランスが大きく魔族側に傾くだろう程度な事くらいは、ウィルでも予想できた。

実はウィル自身は世界の勢力争いについてはあまり強い関心を持っていない。どちらにパワーバランスが傾こうが世界そのものが平和になるならそれでもいいのではないか、というお気楽な考えが根底にある。
では何故ウィルは魔王ルゲイズと積極的に戦っていたかというと、ルゲイズが極端な魔尊人卑主義者だからである。それも人間と仲良くしようとする同族すら痛めつけかねない程の極端な思考の持ち主、とルゲイズの事をウィルは認識していた。
実際ルゲイズはそこまで酷い人物ではなく、参謀役であるヴァンデルオンがルゲイズに敵対する魔族(のかなり尖ったタカ派のみ)を見せしめの為に一族郎党皆殺しにした事が大きく誇張された内容の噂が広まったのが原因だが、そんな事はウィルは知りようがない。

それはともかく。

いま魔族側にパワーバランスが大きく傾くと、間違いなくルゲイズは人間達を蹂躙し始めるだろう。そうなると真っ先に狙われるのは人間の中でもとりわけ強い発言力を持っているベッケンハイム皇族、すなわちウィルの家族達だ。
幾ら変人奇人集団であるとはいえ大切な実の家族。そんな彼等が殺傷される可能性がある以上、ウィルはルゲイズを倒す事を試みるのは当然と言えよう。

「その結果がこれなんだけどね。」

ハァ、とため息をつきつつ胸元に目をやるウィル。見事にまっ平らに見えるが、その手が大好きな人が見ればAAカップクラスの貧乳である事が分かるだろう。その事が何となく悔しく感じるのは、やはりウィルの女性化が進んでいる為か。

それはともかく、それはともかく。

ウィルが魔族にパワーバランスが傾くのを危惧しているのはルゲイズが魔族の頭(かしら)に存在しているからであり、だからこそウィルはこれから始まる戦いに負ける訳にはいかないのである。大切な家族を守る為にも。

この戦い、絶対に負けられない。大切な家族はボクが守るんだ。
ウィルは口をきつく噛み締めると気合を入れた。


些細な差である2つの戦う意味。
これがほんの少しだけこれからの戦いの結果に影響するとは、この時点では誰も知りようがなかった。

<つづく>

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