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チェンジ・ライフ・ラプソディー2 (3)

作.エイジ

2-3

 激突は、一瞬。それだけで勝者と敗者。二つにわかれた。
 勝者は―――
「私の勝ち。でよろしいかしら?」
 鷹野だ。
 俺は叩かれた左手を押さえながら頷く。
「………ああ」
「では約束通り、通らせていただきます」
 言って鷹野は歩き出す。その歩みを止められる人間はいない。
「その必要はない」
 ―――いや。一人だけいた。
 直樹だ。
 直樹はいつの間にか外に出ていて、こちらに向かって歩いてくる。
 そして直樹の姿を見つけた途端、鷹野の表情に笑顔が広がる。
 だけどそれはすぐに凍りつく。直樹が鷹野を無視して通り過ぎたからだ。
 直樹は俺の目の前で止まると、打たれた左手を持ち上げ、
「平気か?」
「………あ、ああ。これくらいなんてことない」
「―――そうか。まあ念のためだ。保健室に行って診てもらおう」
「わ。ちょ、ちょっと直樹!」
 俺の右手をつかみ歩き出す直樹。俺は抵抗できず引っ張られていく。
 だが、直樹は不意に足を止め、
「鷹野さん」
 今まで聞いたことがない声で鷹野に呼びかけた。
「は、はい………」
 応じる鷹野の声は震えていた。
 だけど直樹はまったく容赦しなかった。淡々と言葉を紡ぐ。
「すまなかった。俺が君を避けていたから、こんなことになったんだな」
「………」
 鷹野は答えられない。
 そんな彼女に直樹は、
「これからは君を避けないことを約束する。………でも、覚えておいてほしい」
 鋭い槍を突き刺した。
「友達に手を出すな。出したら………許さない」
 その直後、誰かの走り去る音が俺の耳に響いた。


 それからというもの、今までが嘘だったかのように鷹野の直樹へのアプローチはなくなっていた。ただ遠巻きに直樹のことを切なそうに見ているだけだ。直樹はそんなのどこ吹く風で受け流しているけど。
 一応言っておくと、直樹は鷹野のことを無視しているわけじゃない。むしろ今まで以上に親切に対応しているくらいだ。―――怖いくらいに。
 例えば、
「あの、高島さん。少しよろしいですか?」
「なに?」
「この前のことで少し………」
「ああ。気にしなくていいよ。俺も気にしてないからさ」
「そ、そうですか………」
「話はそれだけ? じゃあ俺は用事あるからこれで」
「は、はい………」
 立ち去る直樹。うなだれる鷹野。
 ………あれ? こうやって改めると直樹も親切に対応しているとは言い難いな。
 ま、まあそれはともかく。こんな状態だ。
 日に日に落ち込んでいく鷹野を見ると、自業自得とはいえ同情してしまう。
 今回のことを勇助に話すと勇助も、
「………そりゃ、かわいそうに………」
 と言って同情していた。
 でもまさかここで諦めるような女じゃないだろう。直樹が好きな気持ちは間違いなく本物だろうし。
 これから鷹野がどう行動するのか、大変興味深い。


 そして鷹野は意外と早く行動を開始した。
 剣道部。いつもの放課後。いつもの練習風景。そこに一つの異物が存在していた。
 そう。それは最早予想通り、鷹野 蘭である。
 その鷹野の言葉に俺、唖然。周りの皆も唖然。
「………ごめん。もう一度お願い」
 俺は手を上げ、再度確認。
 鷹野は頷いて、
「私を剣道部に入れてください」
 ………聞き間違いとかじゃなかったよ………
「あ~………」
 さて。どう答えるべきか。
 そう考えていると、
『ダメです! 絶対ダメ!!』
 後輩達が見事な四重奏(カルテット)で叫んだ。
「あなた、この前自分がなにをしたか忘れたんですか!?」
「高島先輩に迷惑をかけるだけじゃなく、飛鳥先輩まで傷つけて!」
「その上剣道部に入部なんて!」
「………まだ懲りないの?」
 後輩達の言葉に鷹野は、
「―――高島さんには謝りました。苦労しましたが………」
 へえっと感嘆する。よく謝れたもんだ。
「ですが飛鳥さんとは互いに合意した上での勝負。その結果です。―――ですよね?」
「―――まあね」
 俺は頷く。
 あの時は頭に血が昇っていたとはいえ、正式な勝負だった。それを翻すつもりは毛頭ない。
 鷹野は後輩達を相手にしていても仕方ないと思ったのか視線を俺に移し、
「それでどうなのかしら? 実力的には文句は言わせませんし、入部届けも持ってきたのですけど」
 パラリと入部届けの紙を広げてみせる。
 むむ………
「………一つだけ、いい?」
「なにかしら?」
「本気………?」
「勿論」
 鷹野、即答。その態度に迷いも嘘も見られない。なら―――
「………わかった。剣道部へようこそ。鷹野 蘭さん」
「こちらこそ。これからお世話になりますわ。飛鳥 仁美さん」
 後輩達の不満気な声を受けながら、俺達は握手を交わした。

<つづく>

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