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チェンジ・ライフ・ラプソディー2 (4)

作.エイジ

2-4

 そんなこんなで剣道部に入部した鷹野だが、部活動については予想外に真面目だった。
 朝練にもきちんとくるし、練習そのものにも真面目に取り組んでいる。
 その姿からはなんであんなことをしたのか想像できないくらいだ。
 鷹野がそんな調子なので後輩達もなにも言うことができない。でも妙な距離感があって気持ち悪いというかなんというか………微妙な感じ。
 だけどそんなこう着状態も長くは続かなかった。後輩達がついに動いた。
「やっぱり我慢できない! 鷹野先輩、勝負です!!」
 そう言ったのは花穂だ。
「勝負?」
「そう。私達とそれぞれ勝負して、私達が勝ったら剣道部から出ていって!」
「私が勝った場合はどうなるのですか?」
「もう私達は何も言いません。鷹野先輩がなにをしても結構!」
 その言葉に後ろにいた後輩達全員が頷く。
 それを見て鷹野がニヤリと口元に笑みを浮かべ、
「そう。それは美味しいですね」
「ちょ、ちょっと待った!」
 俺は慌てて割り込む。
「そんな事は認めない! 絶対ダメ!!」
 完全な私闘による退部の有無なんて認めるわけにはいかん! 
 ―――それにだ。
「あら。心配しています? 優しいですね。でも―――」
 そこで鷹野は言葉を切り、
「いったい『どちらの』心配ですか?」
 その言葉に後輩達は目を鋭くし、俺は押し黙った。
 そう。俺が心配しているのは鷹野じゃなくて後輩達の方。
 理由は簡単。鷹野の方が後輩達よりも強いからだ。それも圧倒的に。
 おそらく四人全員を同時に相手にしても勝てるに違いない。
 直接剣を交えたからわかる。力量は嫌というほど思い知らされた。
「それとも………飛鳥さん。あなたがやります? この子達の代わりに。あの時とは違って今度はいい勝負ができるでしょうし」
『なっ!?』
 驚愕の声はいったい誰から漏れたのか。
 そして怒りのあまり鷹野に詰め寄ろうとするが、
「!? 先輩!?」
 俺はそれを止めた。
 そして言う。
「………ごめん。ここは譲って」
「―――っ!!」
「お願い」
「―――好きにすれば!?」
 花穂はそっぽを向き、
「部長、ファイトです!」
 春菜ちゃんは胸の前で両拳をぐっと握り締め、
「………」
 雪緒は無言で俺を見つめ、
「………勝って」
 月夜はその一言を残した。


 両者防具を身にまとい、面を被り、竹刀を持ち、立ち上がる。
 そして前に進み、開始位置にて止まる。
「―――では。只今より飛鳥仁美 対 鷹野蘭の試合を始めます。両者、礼!」
 審判―――今回も雪緒だ―――の言葉に従い、俺達は互いに礼をし、竹刀を構える。
 それを確認すると、
「はじめ!」
 こうして試合が―――闘いが始まった。
 だけど俺達はお互い動かない。ただ相手の様子を伺っているだけ。
 正確には俺は『動かない』じゃなくて『動けない』だ。
 なにしろ打ち込む隙がまったくない。かといって隙を作ろうと迂闊に打ち込みにいけばまず返されて終わりだ。
 この数日間、こいつと練習してわかったことがいくつかある。その一つがこいつの剣の型は『後の先』であるということだ。
 すなわち相手を誘い、その隙をつくという方法。
 もちろん自分から攻めることだってできる。だけどいわゆるこいつの『必殺の型』は相手の攻撃を受け流し、その隙をついての面打ち。これだろう。後輩達がこの流れで倒されるのを何度も見てきた。
 それに対して俺の攻め方は『スピードとパワーによる乱打』だ。それによって相手の防御を崩し、そこを打つというのが俺のスタイル。
 鷹野とは対照的な上、相性はあまりよくない。しかも今の俺は男の時とは違ってスピード、パワー両方共に落ちている状態。
 練習によってスピードは完全じゃないしろ取り戻してはいる。だが圧倒的にパワーが足りない。
 とにかく真正面から打ち合うのは論外。となれば―――!
「―――胴!」
 俺は姿勢を低くして、すくい上げるように胴を打つ。
 鷹野はそれを防ぎ流すと、その勢いを利用してがら空きの面へと竹刀を振り下ろした。
 だけどそうくることはわかっている事。俺は竹刀を引き戻してその一撃を防ぎ、小手を打ち込む。だがこの一撃も鷹野の体さばきによってかわされてしまう。
 そのまま連撃にもっていく事もできたが、深追いは危険と判断して俺は間合いを開けた。
「………ふうん………」
 その時、鷹野のつぶやきが俺の耳に入る。どうやら今の一連の動きで俺の狙いがバレたらしい。
 俺の狙い―――それはあえて頭部に隙を作ることによって相手にそこを攻めさせ、それを捌いて攻撃するというものだ。
 どれだけその攻撃が速くて鋭かろうが、攻めてくる場所が前もってわかっていれば防ぐことはできる。まして相手はそこを攻めるのが大好きなんだ、隙があれば当然打ってくる。
 だが俺の狙いは最早バレバレ。そうなると次に打ってくる手は恐らく―――
「っ!!」
 鷹野がこちらに仕掛ける為、開いた間合いを一瞬で詰めてくる。さっきも言ったが鷹野は自分から仕掛ける事ができないわけじゃない。ただやらないだけだ。だから必要とあれば容赦なくやってくる。
 だけどこれはむしろ望むところ。正直あれは何度も通じる方法じゃない。いずれ裏をかかれて倒される。
 だからこれは好機。鷹野を倒すことができる最大のチャンス。
「はああああっ!」
「やああああっ!」
 お互いの裂帛の気合。縦横無尽に舞い、相手を倒そうと襲い掛かる竹刀。それらを流し、受け止め、弾き、繰り返し相手を襲う。
 両者は完全に互角―――のように見える。
 でもそうじゃなかった。その均衡は少しずつ、確実に崩れていた。
「くっ! ううっ!!」
 押され始めたのは俺だ。だんだんと、でも確実に鷹野の竹刀を捌けなくなってきている。
(なん………で………っ!?)
 胸中で呟く。
 スピード。パワー。両者共に互角なはず。差があるのは技量だが、この乱打戦においてはそれもほとんどなかったはず。そうなると残りは純粋な体力差だが、それも考えづらい。
 じゃあなんで!?
「っ!!」
 鷹野が面を打とうと振りかぶる。すると両胴がガラ空きになった。
 チャンス―――!?
 俺がそう考えたのはほんの一瞬。身体は反射的にその胴に向かって一撃を放っていた。
 狙いは逆胴。これなら―――!!
 その時、鷹野と視線が交錯する。鷹野の目は―――笑っていた。
(しまっ―――!)
 もう、遅い。
 俺の一撃は後ろに跳んでかわされ、
「面!」
 踏み込みと共に振り下ろされた竹刀は、俺の面を打ち抜いた。
 勝負、あり。鷹野の、勝ちだ。 

<つづく>

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