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チェンジ・ライフ・ラプソディー2 (23)

作.エイジ

 風が、吹く。陽の光が差し込み、その光が影を作る。その光が眩しくて、俺は目を閉じた。
 そして、ゆっくりと視線を外し、正面へと向ける。
 そこに鷹野はいた。制服姿で手には竹刀を持っているが、それだけだ。
 ただそれだけなのに、存在感が物凄い。まさに威風堂々といった言葉がふさわしい。
「遅い到着ですわね。まあ、来ただけよしとしましょうか」
「………ずいぶん偉そうね」
 俺は半眼でぼやくが、
「あなたが不甲斐ないだけですわ」
 と一蹴された。その言葉に俺はなにも返せない。
「では、あなたが高島さんの事をどう思っているのか答えを聞かせてもらいましょうか。この後におよんでふざけた事を仰るようなら―――」
 すっ………と竹刀がこちらに向けられる。
「わかってますわね?」
「………わかってるから。大丈夫」
 ………正直に言えば、あまり言いたくないんだけどな。恥ずかしいし。
 でもちゃんと言わないと。こいつには特に。
 だから俺は、口を開いた。
「あたし、飛鳥 仁美は―――」
 俺、飛鳥 仁次郎は―――
「一人の女の子として―――」
 そして同時に一人の男として―――
「高島 直樹の事が―――」


『好きだ』


 声が響く。過去とは違う、現在の声が。変わってしまった、今の声が。
 その声は高らかに響き。だけど不安と恐怖に揺れていた。
 なんだかんだ言っても、やっぱりまだ少し怖い。直樹が、じゃない。自分の事が。自分の気持ちが。
 でも、もう認めなくちゃいけない。そしてどんな形であれ進まなくちゃいけない。
 だから俺はまっすぐに前を見つめる。視線の先にいる鷹野を見据えて。
 鷹野はそんな俺をしばらく見つめて「ふん」と鼻を鳴らし、
「どうやら一応の覚悟はあるようですわね」
 と若干不満気に呟いた。
「では次は言葉ではなく、行動でその覚悟を示していただきましょうか」
 持っている竹刀を鷹野は構えて、
「あなたも構えなさい。そして私に示しなさいな。自分の気持ちを。………もし、私が納得できなかったらその時は―――」
「わかってる」
 それ以上は言わせない。
 そんな事はさせない。俺は必ず直樹の下へとたどり着く。
 そして―――
「いくぞ」
 告白、する!


「小手! 胴!」
 声と共に竹刀を走らせ、打つ。
「面! 胴!」
 相手が防具をつけていないとか、そんなのは関係ない。意識する余裕すらない。
 ただ打つ。
 打つ打つ打つ打つ。
 だが当たらない。
 俺の打ち込みを鷹野は悠々と避け、捌く。
 改めて思い知らされる。絶対的ともいえる力量差を。
 攻めているのはこちら側なのに、追い詰められているのもまたこちら側。
 正直、自分が女ではなく、男に戻ったとしても勝てる気がしない。
 ………一人の剣道家として素直に尊敬する。これほどの技量を会得するのにいったいどれほどの訓練を積んだんだろう。そして俺はこれから先、こいつを超える事はできるんだろうか。
 答えは………未知だ。
 けど、今は。今、この瞬間だけは。こいつを超えなくちゃいけない。超えて納得させ、直樹の所へ行かなくちゃいけない。
 だから―――!!
「………」
 唐突に攻撃をやめ、距離を取った俺に鷹野はしかけるでもなく、ただ構えるのみ。
 待ってくれているのだ。俺の渾身の一撃を。
 ―――ありがとう―――
 心の中で礼を言い、息を整え、
「面―――!!」
 全身全霊を込めた一撃を放つ!!
「っ!」
 鷹野がそれを迎え撃ち、互いの竹刀が交錯し、衝撃が弾けた。
 結果、俺の竹刀は弾き飛ばされ手中にない。
 だけど鷹野の竹刀も刀身半ばから折られていて、その手にはないも同然だった。
「―――これは」
「相打ち………ですわね」
 鷹野はふうっと息を吐き、緊張を解く。それを見て俺も同じように息を吐いた。
「………まぁ、よしとしましょう。合格ですわ」
「え………」
 鷹野の言葉に俺は目をぱちくりさせる。
「なんですか。その顔は」
「いや、だって………」
 不合格でもおかしくないと思ったのに………。
「………正直に言えば通したくはないのですけど。サービスですわ」
「―――ありがとう」
「別にお礼などいりません。それよりも高島さんの居場所ですが―――」
「………」
「あなたの自宅ですわ」
「………へ?」
 予想もしていなかった場所を言われて、思わず声が上がる。なんでそんな場所に?
「………疑問はわかりますが、細かいことは気にしないように。考えるだけ無駄ですから」
「あ、そう………」
 答える声は呆れ気味だ。
「さあさあ、早く行きなさいな。高島さんが待っていますわよ?」
「………そうする。じゃあね」
 背を向け、俺は歩き出す。
 その背中に、
「がんばりなさいな」
 エールを受けて。

<つづく>

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